自分の書く技術ブログは、どうやら多くの人に良いと思ってもらえているらしい。
所属企業のテックブログとして以下の2つの記事をZennに投稿した。
ココナラとしてZennに投稿した2記事

所属企業で合計200以上の記事が投稿されている中で、私が投稿した2記事は歴代でも1位と3位のいいね数を誇る。

私の書いた記事がなぜそれほどに読まれ、いいねを獲得できたのか?
この2回は全くの偶然でない。再現させられるだけの執筆技術を私は持っていると思う。

それを紹介しよう。

これを達成すれば良い

  1. 最後まで読んでもらえるようにする
  2. 他の人に教えたくなるようにする

これら2点を達成できれば、多くの人に「いいね」と思ってもらえる記事になる。
しかし簡単ではない。1つずつ見ていこう。

1. 最後まで読んでもらえるようにする

はっきり言うとこれが最も難しい。
どんなに内容が優れた記事であっても、読み進めるのが辛くなったり、難解だったりすることで読者が離脱してしまうことは多くあるだろう。

最後まで読んでもらうための工夫を紹介する。

1-1. 文章全体を通した難易度の波を設計する

これはゲーム制作の用語で言うレベルデザインだ。
レベルデザインというのは、ゲームをプレイするユーザーがなるべく最後まで楽しんでプレイできるように、ゲームの進行度ごとの難易度や報酬をどのように設計するか、というものである。

記事執筆に話を戻そう。
読者が読み始めて最後の1文に到達するまでの間に、その時々で目にしている文章の理解難易度は上下する。
これをなるべく、序盤は簡単な内容にし、難しい内容はなるべく終盤に書く ようにすることで、読者は最後まで読み進めやすくなる。

また、記事の途中で中ボスのように理解することで満足感が得られるような章を設けるのも重要だ。
そうすることで、「読む価値がありそう」と読者に思わせたり、最後まで読まずして「この記事を読んで良かった」「この記事をさらに読み進めたい」と思わせることができる。

ちなみにこの節は、序盤に登場するタイプの中ボスだ。
多くの人は「レベルデザイン」という概念を知らなかっただろうし、それを記事執筆に活かすことの効果に納得したと思う。有用な知識を新たに得て、あなたに満足感が既にあるのであれば、この中ボスは大成功だ。

では次の工夫を見ていこう。

1-2. 読者の関心をコントロールする

記事を読み進める途中途中で読者がどんなことを思っているかを想定しよう
そしてそれを踏まえた文章展開をしたり、逆に前もって読者の関心をコントロールしよう。

読者の頭の中で考えられたこととは違う方向へいくような文章展開をしてしまうと、読者はそれまで読んだ内容をワーキングメモリの隅っこに追いやって読み進めることになる。そのような文章は認知負荷がかなり高い。

文章を読み進めると次なる関心事や疑問が浮かぶが、それ自体を執筆者がコントロールし、それに沿った展開にするのだ。

例えば、あることについて説明をするが、あえて触れていない事項を作る。すると読者はそれについて疑問に思う。
次の文章で、読者が疑問に思っているであろうそれについて取り上げ、説明するのである。
こうすると、読者は自然な関心の流れで文章を読み進められるのである。そうなるように文や章を工夫しよう。

これを実践するのは少しばかり難しいだろう。
読者の関心をコントロールできる、もっと簡単なテクニックはないだろうか?
もちろんある。それを2つ紹介しよう。

1つ目の簡単なテクニックは、
読者に問いかけ・提案する文を書くことで簡単に読者の関心をコントロールすることができる、というものである。
「〇〇はどうだろうか」「〇〇しよう」などといった表現だ。

実はここまでにも何度か、このように関心を誘導するテクニックを使っている。気づいただろうか。

2つ目の簡単なテクニックは、
必要のない事柄を登場させないこと。必要以上のことを述べないことだ。
なぜそれが良くないのかというと、読者の関心が本筋と別のことへ分散してしまい読み進める邪魔になるからだ。

このようなケースでは読者は本筋のこと以外に、その不必要な事柄にも意識を割き、関心を寄せ、考えを巡らせるだろう。しかしそれは執筆者の伝えたいことではないはずだ。必要ない事柄を登場させたせいで読者の関心をコントロールできなくなっているというわけだ。
そして読者は余計なワーキングメモリを消費し、高い認知負荷に晒される。それがさらに高まると、読者は目にしている文の意味を理解できず、その先を読む意義が失われたように感じるだろう。

2つのテクニックをここでは紹介したが、とにかく大切なのは最初に述べた

記事を読み進める途中途中で読者がどんなことを思っているかを想定しよう

ということだ。
2つのテクニックは局所局所で簡単に実践できると思う。
その上で、本節の主題である「読者の関心のコントロール」について意識してみると良いだろう。

次節では、「最後まで読んでもらえるようにする」ための最後の工夫を見ていこう。
これは本節でのテクニックの説明に登場した、「ワーキングメモリの消費」や「認知負荷」に関連するものだ。

1-3. 文章読解の認知負荷を低くする

文章の読解というのは多くの人がなんとなくやってのけていることだが、意外と難しいし脳に負荷がかかる。
例えばソフトウェア技術の記事であれば「内容そのものの理解」に多少の負荷がかかるだうが、それに加えて「文章の読解」にまで負荷を感じ日本語としての意味が理解できなかったとしたら?読者は間違いなく離脱するだろう。
読みやすい文章にすることは大切だ。

ちなみに私は、他人の文章を読んでもすぐには理解できないことが多い。
国語力がどの程度かというと、高校生の時にセンター試験の現代文で100点中97点を取ったので、良い方だと思う。
※センター試験というのは、2024年現在で言う共通テストに相当する、大学入試の一環となる試験である

そんな、現代文の読解に優れた私が他人の文章を理解しづらいのには、いくつかの問題がある:

  • コンテキストを読み取とることが苦手
  • 不完全な文章を補完して理解することが苦手

要は「空気が読めない」とか「雰囲気がわかってない」的なあれだ。

これらは私の問題であるが、同時に、「コンテキストを読み取ること」や「不完全な箇所を補完すること」を要求するような文章に問題があるとも言える。
そのような文章は認知負荷が高いのだ。そしてこの世はそのような文章で溢れている。

私には前述の問題があるが、しかしそんな私だからこそ逆に強みになっていることがある:

  • 自身にとって理解しやすい文章を書こうとすると、コンテキストや補完に頼らず読める文章に仕上がる。
  • 読んでいる時も書いている時も、文章の認知負荷を意識できている。その勘所も比較的わかる。

そんな私が思うに、認知負荷の低い文章を書くためには意識するべきことがいくつもある。
以下に箇条書きで紹介する:

  • 理解できるような順序で説明する
    • ※「1-1. 文章全体を通した難易度の波を設計する」で説明した内容にも通ずる
  • 余計なことを考えさせない
    • 不要な情報を書かない
    • 矛盾したことを書かない
    • 2通り以上の意味にとれるようなことを書かない
    • 曖昧なことを書かない
    • コンテキスト依存の表現を避ける(※どのコンテキストのもと解釈するべきか、読み手は複数パターンの思案をすることになってしまう)
    • 省略されていて、自明でない補完を要することを書かない(※同上)
  • 日本語を正しく使う(意外に難しい)
    • ※日本語を正しく読み取れる人にとって、間違った日本語は難解に映ると思う。書き手の意図を推測するが、複数の候補が考えられ、表現されている意味を絞り込むことができない。このようなところで認知リソースを消費してしまうので、読み進めるのが非常に苦痛になる。
  • 文章構造を正しく保つ
    • 章や節、箇条書きなどの構造上の親子関係・兄弟関係が、文章内容上の関係性と一致するように保つこと
    • 箇条書きをしている際には特に構造が破綻しやすいので注意する

と、箇条書きで書いてしまったが、これらを意識すると良いだろう。

箇条書きをしている際には構造が破綻しやすいので注意する」については補足が必要なので、それについて述べよう。

箇条書きは書き手にはわかりやすい感じがし、読み手にもとっつきやすいように見える。ただし、正確に理解させるには構造の正しさが必要だ。多くの場合、箇条書きで書かれたものは構造的正しさを保てていない。

また、箇条書きではスッキリと見せるために省略した記述がされがちである。これが認知負荷を劇的に高める。
例えば主語が省略されていた場合、親階層の文での主語が子階層の文の主語となるべきであるが、そうなっていない実例を多く見てきた。

つまり、箇条書きは読み手の補完能力に依存した書き方になりやすいので注意が必要である。
書き手と同等のコンテキストを持っていないと読解できないようなものになることもある。

箇条書きを使うべきではないと言っているわけでは決してない。
箇条書きを使う際は、そのようなリスクを念頭に置いて、スッキリ省略して書きたい誘惑に抗って、読解可能な箇条書きにしなければならないということだ。

極端な例として文章全体を箇条書きで書くようなものもあるが、それは色々なことを省略して書いた覚え書きと同レベルの文章だと言わざるを得ない。ただしそのような性質の内容であればそれでも良いし、適切な場合はあるだろう。

そんなにも言うならば、筆者の箇条書きはどうなのだ?と気になったかもしれない。
私がこの説で書いた箇条書きをじっくり見返してみよう。

私の箇条書きは「文章構造を正しく保つ」が守れていないことに気づいただろうか?
箇条書きの第一階層には、「認知負荷の低い文章を書くためには意識するべきこと」が列挙されている。
第二階層には、第一階層に書いたものを具体化した「やるべきこと」「やってはならないこと」を基本的に書いている。しかし 「」 で始まるもののみが、そういったものではなく例外的に補足文章を書いている。第二階層にそれらが混在しているため、親子関係・兄弟関係を一貫させれていないのである。

なるべく認知負荷を下げるように書いたつもりではあるが、私にも難しかった。


ここまでで、「最後まで読んでもらえるようにする」ための工夫は紹介し終えた。
次は、読まれる記事執筆のための2つ目の大項目を話そう。
読み疲れた読者も多いだろうが、次はすぐに読み終えるので気を楽にして欲しい。

2. 他の人に教えたくなるようにする

読者が他の人に記事を共有してくれれば、より多くの人に読んでもらえるというものだ。
どうすれば読者は記事を共有したくなるだろうか?

その方法を3つ紹介しよう。

2-1. 読後の満足感をもたらすこと

読後の満足感があれば、その読者が他の人に記事を共有する確率は高くなるだろう。
データを取ったわけではないので間違っているかもしれないが、記事をシェアするケースのほとんどはこれに該当すると思う。

読後の満足感をもたらすためには、記事が以下のいずれかを満たせば良いだろう:

  • 新たな学びを読者にもたらす
  • あるテーマについての読者の曖昧な理解を補強する
  • 常識を覆すような事実・考え方を述べている
  • 常識よりも洗練して事実・考え方を整理している

そして記事の内容が上記を満たしていても、「1. 最後まで読んでもらえるようにする」が達成できなければ読後の満足感には繋がらない。

2-2. 議論の余地を持たせること

記事の内容は理解したが、一部議論の余地があるケースでは、意見を交わすために他者へ記事を共有することが考えられる。

一例として、記事での主張が基本的には正しいが、正しいかどうかが「ケースバイケース」である場合に見られる。 細かなケースについて、記事で触れられている以上に考えを深める価値があるようなものならば、その実行のために他者に記事を共有したり、SNSで議論を呼んだりするだろう。

別の例としては、筆者があえて「読者の宿題」のような形にして詳細に触れていないものもある。

しかし議論の余地があるということは、記事としての完成度に改善の余地があることも意味する。
そのバランスをどうするかは筆者が狙いをもって決めるべきことだ。

2-3. マウント欲をくすぐること

「マウント欲をくすぐる」とはどういうことか?

それは、読者に「自分はこんなにもすごいことを理解している/知っている」という満足感を、優越感という形で他者へ向けさせることだ。
自己を他者と相対評価する傾向が強い人ならば、そういう心理状態になったことはあるのではないだろうか?
彼らはSNSで記事をシェアするとともに知識をひけらかすはずだ。
(ただし一応述べておくと、その人は「優越感・マウント欲」に駆られたわけではなく、自己の優秀さをアピールすることがキャリア戦略やビジネス戦略上の利益につながるからそうしているだけかもしれない。)

どうすれば読者にそのような行動を取らせられるのだろうか?
記事の内容が想定読者にとってちょうど良い難易度(少し頭をひねるor真新しい視点で見ることで理解できるもの)だと、読後の満足感が非常に高まる。
そしてこの少し頭をひねるor真新しい視点で見ることで理解できるものというのが、自分を一段上のステージへ上げたような優越感をもたらす。

さらに小手先のテクニックを紹介しよう。
「これに気づいている者はほとんどいない」「これを理解できる読者は非常に聡明である」というようなことを煽る内容を盛り込むことで読者の優越感を後押しし、マウント欲をくすぐることができるだろう。

おわりに

読まれる記事を書く技術として、以下のことについて述べた:

  1. 最後まで読んでもらえるようにする
  2. 他の人に教えたくなるようにする

この記事を読んでみて学びはあっただろうか?
もしあなたが満足感に包まれたなら、この記事を誰かに共有してもらえないだろうか?

カテゴリー: Tips

hahnah

はーなー。フルスタックWebエンジニア。モバイルアプリも少々。Elmが好き。

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